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嶺南の光…小さな奇跡

夜更けに一人、ベランダから真っ暗闇に浮かぶ、輝く星たちを眺めていると、深い静けさに包まれる。いま、こうして生きていることが、奇跡のように思えて来る。


4月から、以前勤めていた事業所へ通い、近くの山の休耕地で、障がいのある仲間たちと自然栽培を行っていた。彼らにとって栽培して販売するまで作業しやすく、健康に役立つ食物を人々へ届けれたらと、1反弱の畑で、オクラ、ミニトマト、エダマメ、ジャガイモ、アピオス、ショウガ、サツマイモなどなど育て販売して来た。何ともユニークな人たちばかりで、愉快なエピソードがたくさんある。楽しく農業に取り組んでいたのであるが、収益は想っていた程あがっていなかった。


12月の仕事納めの日、その嶺南の畑に、借りて置いていた畝立機を友人に返すべく取りに行った。街から嶺南までは約20分、ひと山越えて行く。小雨の中、軽トラックで一人の仲間と山に向かった。「畝立て機を軽トラックに積む間ぐらい晴れていてくれたらなあ」と想いながら走る。その想いとは逆に、空はますます暗くなり、途中「アラレ」が降り出した。車の窓に打ちつけるアラレを見ながら、ああ、これが一年の終わりか、とあまり成功したとは言えない農作業の最終日に肩を落とした。隣の彼はというと、ワイパーの速い動きがおもしろいらしく、楽しそうに笑っているのだった。


法皇トンネルを越えると、道路の淵にはアラレか雪か、白く積もっている。暗い曇空から雨が降りしきっている。山の畑に着いて、降りやまぬ雨の中、びしょぬれの畑の中を歩いて行った。畝立機のある場所につき、エンジンをかけた。動かそうとしたその時、ふと明るさを感じた。西の空を見上げると、なんと雲間から「太陽」が顔を出したのである。降っている雨は次第に小降りとなり、太陽の光に照らされて、まるで光の粒のように輝きながら畑に降り注いでいる。「ああ、なんて素晴しい…」動きを止め、しばらくその美しい光景にしたっていた。


雨が降っているのに、太陽の光が降り注ぐ、奇跡的な光景―。自然の活動と畑に心から感謝の言葉を述べた。畝立機を軽トラックに乗せる間、雲間からずっと太陽は輝き、畑の周辺は不思議に明るく、光る雨が降っていたのだ。


車のシートをかけ、山を下りてゆく。帰りの坂道から畑の方を振り返ると、もう太陽は見えず、黒い雨雲が空一面を覆っていた。雨は降り続いている。さっきの光景は、まるで奇跡のような出来事であった。これまで仲間たちと行って来た農作業は、無駄ではなく、「天」が祝福してくれたのだと思った。車の中で、いつもはよく大きな声で独り言をいう彼だが、帰りは何故か落ち着いて、静かだった。大自然に感謝!!、あの光景は決して忘れない。もうすぐ新しい年が始まる。(2019.12.27)

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