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執筆者の写真TOMO

神仙境・黄山紀行(2)


黄山の山中で一夜を過ごした朝。雨が降っていた。

荷物の運搬を仕事とする人たちが、太く長い棒の両端に荷物を括り付けて、肩に背負って出発していく。雨で、山の景色は霧の中、傘をさして登山道を降りてゆく。所々、登山道を横切り雨水がせせらいでいる。白鶴嶺駅に着くと、待合室は大勢の人で込み合っていた。中国語はさっぱりわからない、とにかく賑やかである。並んでロープウェイに乗った。あたり一面、白い霧の中をロープウェイは降ってゆく。この霧が晴れた後には、雲海が現れるのだろうなあと思いながら黄山を後にした。


雲谷駅に着き、ガイドの車で山岳道路を下ってゆく。ガイドに山水画を販売しているお店を案内してもらい、黄山大門近くの土産店に入った。お店の壁一面には、大小さまざまな美しい山水画が掛けられている。ぐるっと見て回るだけでも目の保養になる。その中で、ひときわ目を引いた横長い山水画と縦長の山水画を買うことにした。また、せっかくなので黄山の写真集や水墨画の本も買った。

ガイドに通訳してもらい交渉している時、そのお店の人が手招きするのでついて行くと、事務所らしき部屋に通され、「これを見てくれ」と言わんばかりに、彼は鍋の中にあるおかゆみたいなご飯を指さして、食べ出したのであった。すぐにピンときた。地方での商売も大変なのだろう。貧しい食生活をしている…。金持ちの日本人旅行者が名画を買いに来たとでも思ったのだろうか…。そんなにお金は持っていないのに-。中国社会の貧富の格差を垣間見た出来事であった。

私は無言で店内に戻り、ガイドがいう金額のとおりに清算をした。少し高いと思ったけれど、日本では決して見られない本場の美しい「山水画」を買うことができたと思った。その掛軸をリュックに詰めると半分以上の長さがはみ出した。背負う方が楽なのでそれで旅を続けた。

黄山はお茶でも有名らしい。お店の人が出してくれた。透明のコップに茶葉を入れ、その上から湯をかぶせ、茶葉が下に沈むのを待ってそのままで飲むのである。ちょっと野生ぽい味がした。店を出て、黄山大門で写真を撮った。大分後に気付いたのだが、当時は大門の上に大きな龍が絡むような作りになっていた。現在ではそれが取り外されているようである。


その後、車で屯渓まで帰り、観光名所だという「老街」を散策した。古風な中華風建物の土産店が道路の左右に長く続いてにぎわっている。店並みを楽しみながら、中国ならではの工芸品やお土産、ガイドお勧めの音楽カセットなどを買った。レコード屋には黄山の雰囲気を醸す幽玄な音楽が流れていた。老街を出たところに「新安川」が流れている。何か懐かしい感じがした。川辺に立つと、色々な旅の思い出が巡るのであった。小屋のような喫茶店でビンのまま出されたジュースを飲んだ。

その後ガイドから、今日は屯渓から上海行きの飛行機は出ないかもしれない、その場合バスで夜通しかけて上海に行くしかない、と告げられた。中国では、交通網の時刻表があてにならない時があるらしい。心配していたが、少し遅れて飛行機は飛び、上海に着いた。空港ではリュックサックから飛び出ているもの(掛軸)について、何度か検査される羽目にあった。その日は上海に一泊した。


翌朝、上海から飛行機で大阪空港へ、無事日本に帰って来た。日本に降り立つと、何故か白くピシッ―と張り詰めたような「神気」を感じた。八百万の神々が住まう「神国」日本!?。中国とはやはり風土が異なっている。電車に乗り換え再び高野山へ向かった。奥の院に参拝。金剛三昧院に預けてあったジムニーに乗り、高野・竜神スカイラインを走り帰宅に着いたのであった。

中国神仙境・黄山への旅は素晴しかった。神仙が住まう境地を体感することができた。精妙で美しい山霊の気の流れは、今でも忘れることができない。今度もし行ける機会があれば、慈光閣から玉塀楼コースで、主峰の蓮華峰(1,873m)、天都峰(1,829m)へ登ってみたい。温泉にもつかり、ゆったりとした旅をしてみたいものである。

(黄山紹介TV)

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