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  • 執筆者の写真TOMO

神仙境・黄山紀行(1)


学生たちの運動で民主主義への変革が進むのかと思われた天安門事件の翌年-。

一路、ジムニーで高野山に向かい、金剛三昧院に宿泊した。当院の早朝には「ほとけごころ」という美しい仏教賛歌が流れる。お勤めを終え、大阪空港へ向かい、中国・上海行きの飛行機に乗った。

はじめての海外旅行。はじめて来た中国大陸。上海の街は活気に満ちていた。旅のせいか、異国なのに何故か自由さを感じる。その日は上海の街を歩き、名所を観光し、中国料理を堪能してホテルに宿泊した。


翌朝、上海から安徽省屯渓行きの飛行機に乗った。飛行機からは雄大な大陸が見渡せる。

空港を降りると、待ってくれていたガイドの車に乗り、憧れの神仙境・黄山へと向かった。

黄山は、山水画に描かれるような山容が72峰あり総面積1,200k㎡に及ぶ山岳地帯である。中国の美しい五岳(東岳・泰山、西岳・華山、南岳・衡山、北岳・恒山、中岳・嵩山)の威容をすべて併せ持ち、奇松・怪石・雲海・温泉という4つの景観が複合している天下第一の山・仙境と伝えられている。

車で田園地帯を通り山の方へ向かう。黄山大門をくぐり、山岳道路を走りぬけて、ロープウェイ乗場の近くにある雲谷寺山荘に着いた。その日は山荘で一泊。テレビをつけると、神奇・黄山の風景が流れていた。

翌朝、ロープウェイに乗って出発する-。窓には深い谷間からそそり立つ奇岩奇峰がゆっくりと過ぎてゆく。白鶴嶺駅に到着。始信峰を巡り、仙女峰、石筍峰、夢筆生花等を観、北海賓館で休憩。


一番強烈に感じたのは、黄山の新鮮な「空気」である。これまでに登った日本の霊峰にはない山の空気があった。自然の「気」が練られているというか、ほのかで軽やか、草木や奇岩の香りがカスミに融け合い陽の光りに照らされ暖められたような、精妙であり濃厚、心地よい何とも言えない風の香りが漂っている。北海賓館の広場から山々を眺める、風光明媚、安らぎの空間…。時々、龍が天空に向かって舞い上がるかのような風が吹いて来る。

広場の露店で木の杖と白い帽子を買った。登山道はよく整備されており、所々岩を削った石段がある。断崖に突き出た清涼台から北海を一望する。絶景である。猿が海を見ているような獅子観海、飛来石や光明頂を見渡す。途中、僧侶が登山者たちに説法?している風景に出会った。仙人風の人も歩いている。日本人の若い女性の留学生2人に会い記念撮影する。天然の「霊芝」を売り歩いている人がいたのでそれを買った。

あたり一面、幾重にもそそり立つ奇峰や見事な松の枝ぶり、山肌に突き刺さったような飛来石を見上げながら、西海地区を巡り排雲亭に至る。深い谷を見下ろし、いくつもの岩峰が空にそびえ立っている。日本では見られない仙境-。清涼な空気の中、いつまでも眺めていたい幽玄な風景であった。


その日は山中の西海飯店に宿泊した。ホテルに入ると、色々な山水画がずらりと並んであり、懐かしい喜多郎の音楽が流れていた。険しい山の中なのに、設備が整っていて雰囲気のいいところである。ウーロン茶をいただき、夕刻、ホテルのテラスに出てくつろいだ。

中国の「老子」は、天地自然の玄理とそれに調和して生きる人の道、国の在り方を説いている。「抱朴子」は、仙人の生き方や処世術・神仙術を伝えている。心の中で、日本の聖地・高野山と黄山の神仙境をつなげてみた。805年、空海は長安に留学し青龍寺の恵果和尚から真言密教の奥義を伝授された。空海は、中国の霊山にも関心をいだいていたのだと思う。空海の詩「山に遊びて仙を慕う」「山に入る興」「山中に何の楽かある」など、その山は高野山のことであろうが、自然の山をこよなく愛し、仙人をも慕い、密教を修める師の心情が伝わって来る。目の前には一枚岩の巨峰がそびえ立っている。108の数珠を繰りながら、黄山の峰々を巡り旅をしている風の流れにしたっていた。静かな山の中、仙境でのひとときであった。

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